2010年5月15日土曜日

日曜洋画劇場

 「日曜洋画劇場」が始まったのはこの年のこと。毎週日曜日の21時から放送されている映画番組。最初の約1年間は土曜日だったそうだ。1966年10月1日 がその始まりだ。

 この頃は、ビデオもなく、優れた洋画を楽しめる唯一の番組で、なにより解説の淀川長治氏の話と「サヨナラ」が魅力的だった。

 淀川長治氏は、1909年4月10日、神戸に生まれる。1933年にUA(ユナイテッド・アーティスツ)の大阪支社に入社したのを皮切りに映画人生がスタートした。

1936年(昭和11年)2月には、来日したチャーリー・チャップリンと会談。1938年に「モダン・タイムス」宣伝強化のために東京支社勤務。ジョン・ウェインを一躍スターにしたジョン・フォード監督の傑作『駅馬車』の宣伝も担当した。以後、『駅馬車』は淀川氏の思い入れは広く知られた。

1941年12月の日米開戦後。1942年に東宝映画の宣伝部に転職、1947年に雑誌『映画の友』に入社、編集長として腕をふるった。

「日曜洋画劇場」では、解説の終わりにする独特の挨拶「それでは次週をご期待ください。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ...」は淀川氏を強く印象づけた。

1998年11月11日午後8時11分、腹部大動脈瘤破裂による心不全で死去した。享年89。障害独身で人生を映画に捧げた人だった。映画が輝いていた時代を生き抜いた。その存在は映画を観るものにとっても幸福だった。

 日本では何もかも乱暴になっていくが、テレビでの映画放映もその代表例のひとつだ。BS、CSを別にすれば現在のテレビにおける映画の扱いはひどいもので、監督が観れば「これは私の作品ではない」と憤慨するものが大半だろう。淀川長治氏がタッチしていた「日曜洋画劇場」にもその傾向がないとは言えないが、それでもいまのように酷いものではなかった。
プロがいた時代だった。

 どの世界にも、いまでもプロがいるが、いまは悪いことを平気でする。プロが信用できない時代だ。

淀川長治氏が選んだ究極の映画ベスト100は以下の作品だ。(後ろは監督)

イントレランス/D・W・グリフィス
散り行く花/D・W・グリフィス
キッド/チャールズ・チャップリン
愚なる妻/エリッヒ・フォン・シュトロハイム
十誡/セシル・B・デミル
ロイドの要心無用/サム・テイラー、フレッド・ニューメイヤー
チャップリンの黄金狂時代/チャールズ・チャップリン
キートンのセブン・チャンス/バスター・キートン
戦艦ポチョムキン/セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
メトロポリス/フリッツ・ラング
嘆きの天使/ジョセフ・フォン・スタンバーグ
自由を我等に/ルネ・クレール
街の灯/チャールズ・チャップリン
雨/ルイス・マイルストン
グランド・ホテル/エドマンド・グールディング
或る夜の出来事/フランク・キャプラ
大いなる幻影/ジャン・ルノワール
駅馬車/ジョン・フォード
風と共に去りぬ/ヴィクター・フレミング
邂逅 (めぐりあい)/レオ・マッケリー
チャップリンの独裁者/チャールズ・チャップリン
果てなき船路/ジョン・フォード
レベッカ/アルフレッド・ヒッチコック
市民ケーン/オーソン・ウェルズ
疑惑の影/アルフレッド・ヒッチコック
我が道を往く/レオ・マッケリー
荒野の決闘/ジョン・フォード
美女と野獣/ジャン・コクトー
赤い靴/E・プレスバーガー、M・パウエル
自転車泥棒/ヴィットリア・デ・シーカ
ママの想い出/ジョージ・スティーヴンス
第三の男/キャロル・リード
サンセット大通り/ビリー・ワイルダー
羅生門/黒澤明
河/ジャン・ルノワール
恐怖の報酬/アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
禁じられた遊び/ルネ・クネマン
西鶴一代女/溝口健二
ライムライト/チャールズ・チャップリン
シェーン/ジョージ・スティーヴンス
終着駅/ヴィットリオ・デ・シーカ
七人の侍/黒澤明
夏の嵐/ルキノ・ヴィスコンティ
道/フェデリコ・フェリーニ
エデンの東/エリア・カザン
旅情/デビッド・リーン
死刑台のエレベーター/ルイ・マル
戦場にかける橋/デビッド・リーン
大いなる西部/ウィリアム・ワイラー
大人は判ってくれない/フランソワ・トリュフォー
太陽がいっぱい/ルネ・クレマン
甘い生活/フェデリコ・フェリーニ
かくも長き不在/アンリ・コルピ
処女の泉/イングマール・ベルイマン
素晴らしい風船旅行/アルベール・ラモリス
ウエスト・サイド物語/ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス
突然炎のごとく/フランソワ・トリュフォー
アラビアのロレンス/デヴィッド・リーン
奇跡の人/アーサー・ペン
鳥/アルフレッド・ヒッチコック
野のユリ/ラルフ・ネルソン
コレクター/ウィリアム・ワイラー
アポロンの地獄/ピエル・パオロ・パゾリーニ
暗くなるまで待って/テレンス・ヤング
2001年宇宙の旅/スタンリー・キューブリック
ジョニーは戦場へ行った/ダルトン・トランボ
ベニスに死す/ルキノ・ヴィスコンティ
ゴッドファーザー/フランシス・フォード・コッポラ
ポセイドン・アドベンチャー/ロナルド・ニーム
スケアクロウ/ジェリー・シャッツバーグ
家族の肖像/ルキノ・ヴィスコンティ
ザッツ・エンタテインメント/ジャック・ヘイリー・ジュニア
ジョーズ/スティーブン・スピルバーグ
アニー・ホール/ウッディ・アレン
ブリキの太鼓/フォルカー・シュレンドルフ
ディーバ/ジャン=ジャック・ベネックス
アマデウス/ミロス・フォアマン
カオス・シチリア物語/パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
冬冬の夏休み/ホウ・シャオシェン
カイロの紫のバラ/ウッディ・アレン
グッドモーニング・バビロン!/パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
ザ・デッド 「ダブリン市民」より/ジョン・ヒューストン
八月の鯨/リンゼイ・アンダーソン
ラストエンペラー/ベルナルド・ベルトルッチ
霧の中の風景/テオ・アンゲロプロス
コックと泥棒、その妻と愛人/ピーター・グリーナウェイ
ニュー・シネマ・パラダイス/ジュゼッペ・トルナトーレ
フィールド・オブ・ドリームス/フィル・アルデン・ロビンソン
髪結いの亭主/パトリス・ルコント
シェルタリング・スカイ/ベルナルド・ベルトルッチ
シザーハンズ/ティム・バートン
アダムス・ファミリー/バリー・ソネンフェルド
テルマ&ルイーズ/リドリー・スコット
さらばわが愛 覇王別姫/チェン・カイコー
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス/ヘンリー・セレック
ピアノ・レッスン/ジェーン・カンピオン
日の名残り/ジェームズ・アイヴォリー
オリーブの林をぬけて/アッバス・キアロスタミ
スモーク/ウェイン・ワン
キッズ・リターン/北野武

 ここには、M.Mも、B.Bも、C.Cも入っていないし、「冒険者たち」「初恋の来た道」もない。ベスト100なんてものは好みがあるから人によって違うのは当たり前だ。

 それにしても、つまり、淀川長治氏は映画を通して「良心」を観ていたんだよ。良心の問題だと言う前に良心があったんだ。それが自由と言うもんだ。

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